学生の研究(2021年度)


「ニホンミツバチの移入感染症と伝統養蜂の在来知」D2

 長崎県の対馬は朝鮮半島と九州の間にある離島です。この対馬は、1000年以上ニホンミツバチの養蜂が続く地域で、今も多くの方が伝統養蜂を行いミツバチについての在来知を受け継いでいます。しかし、近年サックブルードウイルス病というミツバチの感染症が島内に侵入し、ニホンミツバチの個体数が激減しています。そこでミツバチの生態学的な特徴と感染経路の関係の研究から感染症対策の研究をしています。またハチカイ(養蜂家)とともに在来知を活かした生物多様性保全に向けての研究もしています。私自身、地域おこし協力隊として移住し養蜂を始め、レジデント型若手ハチカイ研究者として取り組んでいます。

「東京における河川流域の生態系サービスの評価に関する研究」D2

河川は身に近い、とても貴重な緑地です。特に、都市に住んでいる皆さんに、自然に触れやすい、リラックスできる空間です。

私の研究は、河川の風景、人の利用などから、河川の生態系サービスに着目します。生態系サービスは、人間が自然から得られる恵みと言えます。

 今後、持続的な生態系サービスを提供するために、どのような河川整備を行ったほうが良いのか、また、市民が望んでいる河川の姿は何か、私はこのような疑問を持ちながら、研究を進めています。




「生物多様性に配慮した法面の植生管理方法」M1

半自然草原環境の維持のためには草刈りや火入れといった人間による管理は必要です。草刈りは植物の地上部を破壊してしまうので、適切な草刈り時期は重要です。

都市にも小規模な草原性植生が残存します。例えば線路の法面、古くから続いた宅地の法面など。これらの法面の草原性植生の存在は一般住民にはよく知られていません。

 研究の目的は、異なる管理方法が堤防法面の草原性植生に及ぼす影響と、そこの住民がその景観の変化に対しての評価を調査します。調査結果によって、より良い管理方法を選定して、植生の保護や生物多様性を守る上で、人がそこの景観を楽しめる環境を構築します。

「二次林ギャップの林床植生と開花状況のレジリエンス」M1

森林ギャップは、木の自然倒木や火災消失、伐採などできる開けた環境です。私はそのうち、萌芽更新(森林の若返り)とナラ枯れ枯損木除去で形成されたギャップの植物とその花の多様さに注目しています。ナラ枯れは、あるキクイムシが運ぶ菌が原因となって起こる病気です。首都圏でも深刻化していて、多数のナラやシイなどが枯れ、安全上の観点から伐採されています。このまま進むと、首都圏の森林にここ数十年で類を見ないほど多数のギャップができることになります。

 この研究から萌芽更新地の林床植物の多様さのメカニズムの一端を紐解き、増えつつあるギャップが生み出しうる群集・共生系的な価値を見いだせればと模索しているところです。



「生物多様性保全活動の普及・啓発の方法」4年

みなさんは保全活動に参加したことがあるでしょうか。おそらく、参加したことのない方が多いと思います。

ただの肉体労働だろうと考える人がいるかもしれませんが、実際はもっと面白いことがいっぱいあります。

とある方は保全活動に参加してみて、そこに万華鏡的な世界が広がっていると感じたそうです。少しでも興味が湧いた方はぜひ一度参加してみてください。

「都市部におけるゴキブリに対する人々の価値観の転換」4年

ゴキブリと聞くと、家に出る害虫と考える方が多いと思います。実はゴキブリは元々森林に生息する昆虫であり、都市部の公園にも生息しています。夜に植え込みなどを探してみると、落ち葉やキノコ、他の昆虫の死骸を食べている姿を見ることができます。

 本研究では現在、公園に生息するゴキブリの行動を観察しております。そして都市生態系における役割を明らかにし、ゴキブリの生態について伝えることでゴキブリに対する価値観を変えていくことを目的としております。


「明治大学生田キャンパスにおけるコウモリ類の空間分布と要因」4年

人間の生活圏を生活圏とするコウモリ種があります。彼らの大部分は食虫性であり、大食家として知られています。餌の中には衛生害虫や農業害虫などが多く含まれます。このよう彼らは都市生態系内で重要な役割を担っているとともに、人間側にも有益な効果をもたらしています。しかし、暗くて狭いところをねぐらとする生息習性上、人獣共通感染症を媒介する危険を蔵しており、人工構造物をねぐらにして糞尿被害を起こすことも往々生じています。

 彼らの長所や短所どちらも否定できないものだと思います。彼らの個体数の急減は都市内害虫の急増に、急増は被害拡散に繋がると思うからです。しかし、珍しくない種であるせいか、彼らに対する研究はあまり行われておりません。このままだと、予期せぬ被害にただ行き当たることになるかもしれません。そこで、コウモリ音声モニタリングをし、それらの生態に関する理解を得ようと調査を進めています。

「横沢入里山保全地域における、土壌性カニムシ類の直接傾度分析」3年

カニムシとはサソリのしっぽを取ったような外見で、多くの種類がハサミの先端から毒を出し、口から糸を出すユニークな生物です。ただ野山にいくだけではなかなか見ることのできない生物ですが、注意して探せば安定して確認することができます。

 多くのカニムシは土の中に生息している小さな肉食動物で、ゴミムシやハネカクシなどの他の小さな肉食動物と餌を取り合って住み分けをしていると考えられます。このため、僕はこれらの虫たちとカニムシの関係に注目し、どのような基準ですみ分けを行っているのかを研究しています。

 


「雑木林のフェノロジー」3年

皆さんは「フェノロジー」という言葉は聞いたことがあるでしょうか? 学校の生物の教科書や天気予報などで耳にしたことがあるかもしれません。

“フェノロジー”とは“生物季節”のこと。季節の移り変わりに伴う植物の変化を研究する学問です。具体的には春の開花や秋の紅葉・落葉のことを指し、気象庁でも毎年「サクラの開花前線」だったり「モミジの紅葉予報」などを発表しており、私たちの身近な学問の1つといえます。

 そんな私の研究テーマは“雑木林のフェノロジー”であり、樹木の展葉から落葉まで、自分なりに工夫しながら研究を行っています。

 

「明治大学生田キャンパスとその周辺におけるタヌキの環境利用」3年

 最近都内でも目撃されることがあるタヌキ、アライグマ、ハクビシン。ここ、生田キャンパスにもタヌキやアライグマ、ハクビシンなどの野生動物が生息地の1つとして利用しています。私はその中でも在来種であるタヌキに着目し、どのような場所を利用し、そして利用している場所に共通することは何かなどを、タヌキが共同で利用するトイレである「タメフン場」を拠点とし、自動撮影カメラとデータロガーによって行動を記録して研究しています。また、キャンパス内の圃場では野生動物による食害なども起きており、人間と野生動物との関係を様々な側面で見ることができます。

 


「島の生物地理学をもとにした種子の移入」3年

 都内の山地から海岸沿いまで粘着力のある板を設置したり、掃除機で種子を集める研究をしています。島の生物地理学では大陸に近い島ほど種子の移入が多くなるといわれています。都市の中で街の部分を海、緑地を島に見立てて、どのような場所で種子の種数が多いのか、どのような種類の種子が移入してくるのかを調べる研究をしています。

「群れ飼育下におけるキリンの親子関係」3年

皆さんは動物園にどのような役割があるかご存じですか?もしかしたら、「動物園は楽しい!」というレクリエーションのイメージが強いかもしれません。しかし、動物園にはレクリエーションの役割だけでなく、種の保存、調査・研究、環境教育のような役割もあります。

 私は、日本でも珍しいキリンの群れ飼育をしている多摩動物公園で、キリンの親子関係や行動を調べ、種の保存の基盤である繁殖技術や飼育技術の向上に貢献したいと考えています!


「ノビルの生育場所による生育特性」3年

 皆さんはノビルという植物をご存知ですか?初めて聞いた、という方もいらっしゃるかもしれませんが、実はあなたのすぐそばにも生えています。少し自然のある場所なら公園・道端・河川敷の堤防などいろんな所に生育する、いわば“雑草“です。そして、このノビルという植物はなんと美味しく食べることができるのです。ネギの仲間なので、葉は小葱のように、小さな玉ねぎのような地下部も立派な食材に早変わりです。私はそんなノビルはどんな所に好んで生息し、どんな所ならより大きく生長するのかを調べています。ノビルがより多く生え、大きくなる場所が掴めれば、春のノビル掘りが一層楽しくなること間違いなしです

 

「セミ類による都市域の緑地の連結性の検討」3年

 東京都の中央区、江東区周辺の埋立地は江戸時代から現代まで造成されてきました。そして、埋立地にいる陸上の生き物は全て新しく入ってきた生き物と考えられます。
 そこで、私は上記の埋立地の造成年と緑地の造成年、生き物の分布から、新しく作られた土地の生態系について考えるための調査をしています。

「自然に配慮した改修後の二ヶ領用水の生物的環境調査」3年

 神奈川県川崎市を流れる二ヶ領用水では環境に配慮した改修が行われてきました。二ヶ領用水に限らず、近年日本各地でこのような河川改修が進んでいます。しかしながら、これらの改修が実際に河川に住む生物にプラスの影響を与えたかの評価は十分になされていないのが現状です。私はこの点に注目し、改修後の用水ではどのような魚類や水生植物が暮らしているか、調査を行っています。



学生の研究(2019年度)

「市民科学の参加者の特徴と参加動機」M2

 市民科学とは市民が研究のプロセスに参画する調査研究のことを指します。市民参加型調査も含まれるとされ、日本ではモニタリングサイト1000などが該当し、広範囲・長期間の調査が行えるという特徴があります。最近では、チョウや鳥など様々な生物を対象に広範囲で調査する市民科学プロジェクトが行われています。この研究ではNPO法人バードリサーチ他が環境省からの委託で行っている全国鳥類繁殖分布調査の参加者にアンケートとインタビューを実施し、どのような人がなぜ参加してるか、また、市民から見た市民科学の意義につい調べています。これらから、研究者と参加者の良い関係づくりや市民科学の社会への効果につい考えています

「赤塚公園における崖線の植生と傾斜について」M2

 近年、都市部の生物多様性の保全、向上が課題となっていますが、開発の関係上、崖線などの斜面や神社の境内に残っていることが多いです。崖線とは崖地の連なりのことで、そのでき方によって自然に出来た崖は変動崖と浸食崖の2つに分かれています。変動崖は地表の運動によって生じたもので、浸食崖は川や海などの作用で出来たものを指します。現在、東京都立赤塚公園の崖線の調査を行っていますこの赤塚公園は浸食崖を持ち、開園当時から植物相が豊かであるとして、現在でも保全活動が行われています

 本研究では都市部の貴重な空間である崖線の傾斜 と植生について調査することを目的としています。



「地域の地形・自然・人びとの営みとその変遷を再発見する生物多様性教育「生田の歩き方」の実践と評価」M2

 あなたは「生物多様性」という言葉を知っていますか?この言葉は、生物多様性国家戦略2012-2020では、「個性」と「つながり」という言葉で説明されています。例えば人が11人異なるように、種内・種間・生態系間などのスケールで見た際にもそれぞれが「個性」を持っています。さらにそれらの要素は、人と人が互いに影響を与え合ったり、それぞれの人は過去から未来への積み重ねによって変化したりするように、様々な「つながり」を持っています。

 

 私の研究では「生物多様性」を、地域特有の地形と、地形を基盤に形成される自然と人びとの営みと、その相互作用の過去から未来への積み重ねによって形成される、地域固有の特性や物語であると捉えています。生田という地域をフィールドに、生田の「生物多様性」を住民の方々と一緒に再発見する活動を行い、活動を通して得られる気づきがどのようなものか、明らかにしたいと思っています。

「都市域における河川整備工事の総合評価に関する研究 ―東京都野川の事例―」M2

 都市における河川工事計画は、主に治水・水利機能を優先しました。水害から市民の生命と財産を守るめに、河道の拡幅や河底の掘削などにより雨水を速やかに流下させる効率的な治水対策を行ってきました。しかしながら、都市再生及び河川再生が進む中で、都市と水系の融合、人と自然の触れ合い注目されるべきことです。

 

 本研究は野川を対象として、河川工事を評価し、河川周辺の住民にとって貴重で、豊かな自然を確保したいです。また、本研究の成果は今後の都市部の自然再生を考える上での一助となるものと考えています。


「外来植物アレチケツメイが絶滅危惧種ツマグロキチョウに与える影響」M1

 ツマグロキチョウは東京近郊では既に絶滅してしまった希少なチョウです。このチョウは河原に生えるカワラケツメイという植物のみを食草としており、カワラケツメイのない場所には生息できません。近年、アレチケツメイという外来種が国内に出現し、ツマグロキチョウの第2の食草として利用されています。本研究では、①アレチケツメイが侵入することでカワラケツメイにどのような影響を与えるか、②ツマグロキチョウが利用する上で両種に違いがあるかを調べます。食草2種間における発芽特性、繁殖特性、フェノロジーの比較とツマグロキチョウの反応の違いを調べることで、アレチケツメイの侵入が将来的にツマグロキチョウに与える影響を考察します。

「多摩川河川敷の多足類相と環境との関係」4年

 土壌動物は生態系での重要な役割を果たしているにもかかわらず、その分類の難しさや調査のしにくさから生態学的な研究があまりなされてこなかった動物群です。中でも、多足類は他の土壌動物群と比較しても研究が少なく、その生態が謎に包まれています。多足類は、昆虫などと混同されがちですが、脚を多く持つ動物で、ヤスデ、ムカデ、コムカデ、エダヒゲムシと4つのグループに分けられます。私は、土壌動物の研究が今まであまりなされてこなかった多摩川中流の河川敷において、洪水攪乱などによって影響を受ける河川敷特有の環境と多足類との関係を研究しています。さらには、多摩川中流河川敷の多足類相を明らかにしようとしておりま

 

す。



「川崎市にある特別緑地保全地区の鳥類相」4年

 都市の鳥と聞くと、ムクドリやスズメ、カラスを想像してしまいますが、他にも様々な鳥が都市の緑を利用しています。川崎市には、特別緑地保全地区という制度で守られた緑地があります。この緑地で、冬に日本を訪れる冬鳥の種数を数えました。鳥は上位の消費者であり、様々な生きものの恵みの上で緑地を利用しています。どのような種の鳥がいるか、調べることで緑地の豊かさ、質の違いが分かってきます。

「狭山丘陵の草地と湿地における草本植生と訪花昆虫の関係」3年

狭山丘陵は埼玉県と東京都の両方にまたがっており、都市近郊では土地改変であまり見られなくなっている、谷戸を含む里山の環境が残っています。私は狭山丘陵のさいたま緑の森博物館にて、草地(萌芽更新地)と湿地(谷戸)に見られる草本植物と訪花昆虫の調査をしています。昆虫を含む訪花動物は、蜜や花粉などを得るために花にやってきます。一方、多くの花は訪花動物に花粉を付着させること

で送粉を成功させています。これらの関係は多様であり、種間及び個体間で異なることが知られています。この研究を通じて、湿地と草地のつながりにおいて、草本植物と訪花昆虫がどのような関係にあるかを明らかにすることを目的としています。


「生田キャンパスにおける野生動物の種間関係と人間との共生」3年

 ここ、生田キャンパスにはタヌキやアライグマ、ハクビシンなどの野生動物が生息しています。在来種のタヌキと外来種のアライグマやハクビシンは、どのような影響を与え合っているのか、自動撮影カメラによって行動を記録して研究しています。特に、タヌキが共同で利用するトイレである「タメフン場」での種間関係に興味があり、明らかにしたいと考えています。また、キャンパス内の圃場では野生動物による食害なども起きており、人間と野生動物との関係の様々な側面を見ることができます。キャンパスにこのような野生動物がいることで、学生の野生動物に対する意識や自然への考え方にどのような影響があるかを調べるために、学生を対象にアンケート調査を行う予定でいます。

「世田谷区の国分寺崖線周辺の緑地におけるトカゲ類と立地の多様性の関係及びニホンヤモリの樹名板利用」3年

 私は現在研究を2つで迷っているので、今回はその2つどちらも紹介します。テーマの前半は、東京都世田谷区の西側の国分寺崖線に残される9つの緑地において、トカゲ類の生息を確認し、各緑地の立地特性との関係を明らかにすることで、緑地の保全の一助となることを期待します。後半は、人家などでもよく発見される我々にとって身近なニホンヤモリは昼間隠れ場所として写真のように樹名板を利用しています。人めに設置されている樹名板をニホンヤモリも利用していることが面白いと感じたため、自分で樹名板を作成し、設置する場所や形状を変えて、ニホンヤモリが好む隠れ場所を考察します。


「上野動物園の動物解説サインの現状の評価と改善」3年

 動物園は来場者に動物の生態のことや保全に関することを伝えることができる貴重な機関です。そのためには、来場者に「気づき」や「おもしろさ」を提供する必要があります。私の研究では、動物の解説サインが「気づき」に大きな影響を与えるものだと考え、上野動物園での現状のサインの評価をするとともに、どのようなサインが来場者に有効か考え、実際に自分でつくってみることを目標にしています。

 

 みなさんも、動物園に行ったときはぜひサインを見てみてください。その動物のことがもっと好きになりおもしろいと思えるはずです。

「新治市民の森における鳴く虫の生息分布と環境との関係」3年

 私の研究における鳴く虫とは、バッタ目に分類される音を出す昆虫のことを言います。古来より日本人は鳴く虫のその美しい音色を季節情緒や風流を感じるものとして親しんできました。ですが近年では都市化などによる緑地の減少によりその数が減ってきています。そのため私は鳴く虫を保全するためにどのような環境が相応しいのか緑地の管理や土地利用という観点から検討するための生態研究を行っています。鳴く虫はその鳴き声を聞くことで種が判別出来るため、私の研究では調査地をくまなく歩き分布を記録するルートセンサス法やICレコーダーを用いた録音調査などを行い、その分布や生態を調べています。皆さんも身近なところで鳴いている虫の声に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。



学生の研究(2017年度)

「ミズニラの生育環境の解明と 生育地維持の方法の検討」M2

ミズニラIsoetes japonicaは、本州~四国の低地の湿地や池沼周辺、水田に生育する ‘水生シダ植物’です。ミズニラは全国的に減少傾向にあり、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧種に指定されていますが、具体的な保全方法について研究された例は数えるほどしかありません。本研究ではそのような状況にあるミズニラの生育地を維持することを目標とし、管理方法などが異なる3カ所の生育場所について調査を行っています。それぞれの調査地には1m×1mの調査枠を10枠ずつ設け、環非生物的環境(光環境など)と植生に関する調査を行い、収集したデータを解析、その結果からミズニラが好む生育場所を推測しようと考えています。最終的にはその環境をどのような方法で維持可能かを提案する予定です。

「河川の水位低下による 底生生物群集の変動」M2

水生昆虫をはじめとする底生動物は、 渓流生態系を担う動物として、 種数・現存量ともに重要な位置を占めています。河川上流部では、渇水時の水位低下が中流域や下流域に比べて早く伏流状態になります。長時間その状態が継続すれば死滅は当然ですが、短期間であれば、ある程度生存を続け、水量の増加するまで生きのびる種も存在します。そこで、本研究では河川上流部の水位低下に着目し、伏流現象の起きている期間での底生生物群集の生息環境について明らかにすることを目的としています。環境調査の結果としては水路幅、水深、流量ともに夏季に比べ冬季が著しく低下することが明らかになりました。底生生物調査で採集した種の生活型と出現した場所の関係を調べるために出現した種の生活型に分類をしました。

 


「春植物消失後の植生と光環境」M2

春植物は,木々が葉をつける前の早春の雑木林で芽吹き,林床に差し込む日を浴びてきれいな花を咲かせ,そして木々が葉を伸ばし切る夏前には地上部が枯れて地下部で休眠をする特殊な生活史を持つ植物です。ニリンソウは,群生型で白いきれいな花を咲かせる春植物で,ニリンソウが自生する多くの都市公園では保全が図られています。このニリンソウに関して,夏明るい場所と暗い場所でニリンソウが消えたあとに生えてくる植物の量が異なっていることがわかっており,この植生のパターン化と植生タイプによってニリンソウの個体群あるいは個体の成長にどのような影響があるのかを検討するため調査を行っています。

「都市域の中小河川を利用する水辺性鳥類に影響を与える環境要因」M2

現在、宅地開発などにより都市域では鳥類の生息場所が減少しつつあります。その中でも河川は、鳥類の貴重な生息場所として残っています。しかし、都市域の河川は水害対策のためコンクリートの護岸化や河道の直線化などが行われてきたことにより、河川においても鳥類の生息に影響を及ぼされてきました。今まで都市域の樹林地や公園緑地などにおいて鳥類群集に焦点を当てた研究は行われてきましたが、河川に着目した研究は多くありません。特に、人間活動の影響が大きいと思われる中小河川での研究は皆無に等しいです。本研究では、代表的な都市域の中小河川である野川、仙川、神田川、善福寺川において水鳥に絞り鳥類調査を行い河川構造との関係性を調べています。

 


「圏央道茂原第一トンネルにおける哺乳類の利用および生息地分断の回復」M1

道路が建設されることでそこに存在している生態系は大きな影響を受けます。例えば道路での野生動物の死亡や生息地の分断です。近年このような道路が引き起こす野生動物に対する負の影響に配慮した道路横断施設の建設が行われています。圏央道茂原第一トンネルは高速道路によって分断された2つの森をつなぐため,中小型哺乳類の通過を目的とした動物専用の橋です。本研究では圏央道茂原第一トンネルの利用状況のモニタリング、分断された2つの緑地での往来の有無を調べることを目的として研究を行っています。現在の調査では,主にホンドタヌキ,ニホンイノシシ,ニホンノウサギ,アライグマ、ニホンアナグマの利用が確認されています。

「人工針葉樹林における広葉樹二次林および開放地からの距離に伴う甲虫相の差異」M1

動物の糞を食物として利用する食糞性コガネムシ(以下、糞虫)や、オサムシ科に代表される地表徘徊性甲虫は、環境の変化に敏感に応答することから環境指標として、森林環境の変化の評価に多く用いられます。本研究では、人工針葉樹林の甲虫群集の種組成が、1)広葉樹二次林との境界からの距離に従いどのように変化するか、2)林道や伐採地などの開放空間から林内にかけてどのように変化するか、を明らかにすることを目的とし、東京都奥多摩町の人工針葉樹林および隣接する広葉樹二次林において、糞虫・地表徘徊性甲虫群集の調査を行っています。森林管理を考える上で、伐採を含む樹木の適正な管理や、天然林・広葉樹二次林などの人工林内への適正配置は重要な課題であり、昆虫を指標として検討したいと考えています。

 


「トンボ類の群集構造から見た 東京港野鳥公園のハビタット特性」B4

東京港野鳥公園は1989年に東京都大田区の埋立地に造成された海上公園で、園内の自然生態園には淡水池、水路、水田、草地、樹林地など里山景観を構成する多様な環境が人工的に復元されています。野鳥公園の環境要素には多くの水辺環境が含まれていることが特徴で、そうした環境の保全を重点に維持管理を行っています。しかし鳥類以外の生物と景観の関係にスポットを当てて園内の環境を評価した先行研究は多くありません。そこでトンボ類を対象に、野鳥公園がトンボ類にとって生息地としてどのような機能を果たしているかを評価し、野鳥公園の生物に配慮した水辺環境の管理や、湾岸部埋立地における生物生息空間の復元方法を提案することを目的としています。

 

「シチズンサイエンスの参加者の特徴と参加の動機」B4

シチズンサイエンスとは市民が研究に参画する活動のことを指します。市民参加型調査も含まれるとされ、日本ではモニタリングサイト1000などが該当し、広範囲・長期間の調査が行えるという特徴があります。最近では、チョウや鳥など様々な生物を対象に広範囲で調査するシチズンサイエンスプロジェクトが行われています。この研究ではNPO法人バードリサーチ他が環境省からの委託で行っている全国鳥類繁殖分布調査のうち東京都島嶼部での調査の参加者にアンケートとインタビューから、どのような人がなぜ参加しているかを調べています。ここから、研究者と参加者の良い関係づくりやシチズンサイエンスが広く社会に浸透するためのヒントを考えます。

 


「多摩川河口干潟におけるヤマトシジミの 生息状況とその局所的環境」B4

高度成長期からの開発により、東京のような都心部では砂浜や干潟など多くの自然環境が消滅しました。その中で都市部を流れる多摩川に現存する多摩川河口干潟は残された貴重な干潟のひとつであり、水産資源生物の生息地として機能しています。調査地である干潟は、水流の影響を受けて底質が砂質と泥質に分かれ、ヤマトシジミが優占して生息しています。本研究では干潟の地点ごとに本種がどれほど生息するか、また生息の寡多にどの環境要因が作用するかを生息数調査、環境調査により明らかにします

 

「アカボシゴマダラとゴマダラチョウの休眠覚醒の比較」B4

外来種が在来種とどのような影響を及ぼし合うのかについては様々研究がなされており、そうした研究から外来種の影響予測や対策を検討することは非常に重要です。関東地方に定着している外来種の蝶アカボシゴマダラは、それに近縁な在来種の蝶ゴマダラチョウと競合関係になることが指摘されており、干渉作用などを通じてゴマダラチョウに悪影響を及ぼす可能性が指摘されていますが、実際にどのような影響や相互作用があるのかについてはわかっていません。この研究では越冬後の休眠幼虫の活動開始時期を実験的に調査することにより、2種幼虫の餌資源・採餌場所をめぐる競争について考察します。

 


「動物園で外来種問題に関する展示をすることによる教育的効果について」B4

井の頭自然文化園水生物園水生物館の特設展示「みんなの井の頭池 どんな池になってほしいですか?」という、井の頭池のかいぼり・外来種・在来種に関する展示を見た来園者へ、行動観察調査と会話聞き取り調査を行いそこから得られたデータの分析から外来種に関する教育について動物園が果たしている効果を考えています。8月に行った調査では、来園者の集団の属性、年代、性別、滞在時間、会話内容、行動内容(パネル展示を見た、写真を撮ったなど)の項目を、前期調査と後期調査で展示内容を変更して記録しました。

 

「生物多様性普及活動の試みとその質的分析」B4

生物多様性普及活動とは、人が身近な自然の中での体験を通して、生物多様性に対してリアルな価値を見出す場を創出することを目的とした活動です。本活動は、生物多様性の危機の本質を、人と生物多様性の関係が希薄になることで、人が生物多様性に対して自らの経験や生活に結びついたリアルな価値を見出せなくなることに求めます。本研究は、生物多様性普及活動を試行し、エピソードの記録や聞き取り調査によって得た情報の質的分析を行い、活動を通して参加者とスタッフの自然や生き物に関わる価値観がどのように変容したのかを明らかにすることを目的としています。

 


「都市域におけるアズマヒキガエルの非繁殖期の環境利用」B4

近年、都市環境において生息数の減少が指摘されているアズマヒキガエルを対象として研究を行っています。本研究では、目黒区内の公園、緑地を調査地として、繁殖期に産卵に集まるカエル1個体ごとにマイクロチップを挿入し、その後の行動を追う追跡調査などを行うことによりアズマヒキガエルの行動圏を明らかにするとともに、都市環境の中においてアズマヒキガエルの生息に必要となる環境要因を明らかにすることにより、これからの緑地管理の指針を考察することを目標としています。

「木もれびの森のおける森の変化と人の意識の変化」B4

本研究で調査対象地としたのは相模原市に位置する木もれびの森と呼ばれる緑地です。木もれびの森とは1973年に相模原近郊緑地特別保全地区に指定された場所を指します。木もれびの森を含む相模野台地は、かつていわゆる雑木林としての管理がされていましたが、戦後に開墾され、さらにエネルギー源の転換によりその役割は無くなりました。制度により行為が制限され、管理する人もいない林は次第に荒れていきました。現在ではボランティア団体が草刈りや散策路の整備など様々な活動を行っています。本研究では木もれびの森と森に関わって生活している人の関係性及び人の森に対する印象の変化を調べることによって求められる森の様子を明らかにすることを目的としています。